探偵学校5

2020/03/10

( 前回の記事「探偵学校4」はこちら ≫ )

公団敷地内での張り込み中、探偵学校の調査員は私にこう言いました。
「彼女と結婚するから、もうすぐこの仕事辞めるねん。」

私は、探偵になりたいなぁ…なれるかなぁ…?と、悩みつつも希望に溢れた日々を送っていましたので「何ともったいない!結婚しても続ければいいのに…」と、残念というか寂しいというか、何とも不思議な思いになりました。

調査員の方が気の良い人だったので、余計にそう思ったのでしょう。

しかし、今ならわかります。

探偵の仕事は、時間が不規則で休みも決まっておらず、友達や恋人との約束を反故にすることも日常茶飯事。御依頼者の悩みを解決するため東奔西走する毎日で、家に帰れないことも多いです。

それは、とてもやり甲斐のある魅力的な仕事ですが、どこかで何かを犠牲にしている面もあったりします。

結婚を迎えるにあたって、将来を見据えて早めに転職する考えは正しい。

しかしながら、当時の私はまだ22歳。「もしここで働くようなことがあれば、良い先輩になってくれそうだったのになぁ」 と、自分本位の考えしかありませんでした。

そんなこんなで、いよいよ探偵学校も佳境を迎えます。

最後の座学を終え、先生に今後の進路を相談した結果「交流のある探偵社の名前を教えるので、直接求人があるかどうか聞いてみるといい」となりました。

探偵学校の探偵社に就職できれば良かったのですが、知り合いの探偵社を紹介してくれるだけでもありがたい。

求人があろうがなかろうが関係ありません。この仕事をしたい!という熱意を伝えアタックするのみです。

ようやく方針も決まり、晴れやかな気持ちで雑談をしていた矢先、ふと気になったことを尋ねてみました。


私:(壁側を見ながら)「この賞状に書かれている代表の森崎(仮名)さんは、先生のお名前なんですか?」

先生:「森崎(仮名)は基本的にはこちらには来ないんだ」

私:「そうなんですね。じゃあ最後に先生のお名前だけ教えてもらってもいいですか?」

先生:(爽やかな笑みを浮かべ)「ミズサワです」


後々、私は就職先の探偵社代表から「キミとこの校長先生、ミズサワちゃうで。森崎(仮名)さんやがな。キミが唯一の卒業生や笑」と真相を明かされました。

私は「やっぱそうやった。すげえ、しゃあしゃあとミズサワって言うてたぞ、あの人。面白いなぁ」と、嘘をつかれてた!などという思いは微塵もなく、ただただ感心していたのでした。

その日から、私は探偵学校の費用20万円で名前を買ったんだと思うようになり「二代目 元祖

ミズサワ」として今日に至っています笑


探偵学校はここまで。



花は乙女椿。
最高に美しいこの花が咲く頃にはコロナも落ち着いて欲しいですね。
手洗い換気を心掛けましょう。

ではまた! 


投稿者:teikokuh